INTERVIEW

こだわり尽くした、熱海金目鯛ラーメン

株式会社ゴールデンアイ

代表取締役CEO 土屋公泰

熱海市で連日行列ができる人気ラーメン店、「熱海ゴールデンアイ」。地元食材にこだわった金目鯛出汁の熱海ラーメンを求めて地元の人から観光客まで多くの人が訪れ、話題を集めている。同店を手掛けるK’sグループは、これまでも伊豆・熱海を拠点に飲食店事業を展開し、雇用を創出。地元を熱く盛り上げる取り組みや経営手腕にも注目が集まる。同グループの代表を務める土屋公泰さんに話を聞いた。

こだわり尽くした、熱海金目鯛ラーメン

熱海駅から歩いて約5分の場所にある「熱海ゴールデンアイ」では、地元伊豆名産の金目鯛を使用した、こだわりの金目鯛ラーメンを提供しています。「伊豆を元気に!」をコンセプトに、伊豆産の食材にこだわり、熱海に来た人が「熱海らしい料理だね」と言ってくださるような、地域を代表する一品にしたいという思いから生まれた一杯でもあります。お店で提供するラーメンは、スタンダードの金目鯛ラーメンと金目鯛ラーメン“極み”の2種類。スタンダードの方は金目鯛の出汁に加え、地元産にこだわったかつお出汁と鯛出汁をブレンドして仕上げたラーメンで、“極み”は金目鯛の出汁100%のラーメンとなっています。もともと事業の拠点でもあった伊豆産の魚を使用したラーメンを作りたいと、伊豆を代表する色々な魚を試し、一番しっくりきたのが金目鯛でした。

ラーメンを完成させるまでには、2年程の月日を要しています。私自身は全くの素人でしたので、なかなか納得する商品が作れず、完成までは試行錯誤が続きました。スープは特に時間をかけて作っています。専門家の方々に協力していただいたり、ありとあらゆるラーメンを食べて味の研究をしたり、1日10種類のラーメンを食べていた時期もありました。

埋もれないPR戦略と、おいしさの本領発揮

そうして辿り着いた金目鯛ラーメンの味を色々な方に試食していただいたところ、多くの方々に「おいしい!」と言っていただけたことが励みとなり、確固たる自信にも繋がっていきました。金目鯛を使ったラーメンは希少ですし、少なくとも静岡県内では初の試みと言えるでしょう。とにかく味には自信を持っています。

とはいえ開業当初は、どんなに美味しくても容易にお客様を集められるものではないことは理解していました。何より私自身がラーメン屋を経営した経験もなかったからです。そのため地元食材を使ったラーメンであることをSNSやプレスリリースで発信し、オープン時の3日間は杯数無制限、スープが底を尽きるまで無料でラーメンを提供させていただきました。食べていただきさえすれば、その美味しさをわかってもらい、金目鯛ラーメンの良さが広がっていくと確信していたんです。そうした努力の甲斐もあり、地元のテレビ局でも取り上げていただくなど、徐々に評判が広がっていくようになりました。今では行列ができるほど繁盛し、足を運んでいただけるお客様には感謝しかありません。

故郷・熱海への想い

私は高校卒業後に上京し、一度東京の会社に就職した経験があります。しかし当時、仲間とバイクに乗っていた際に事故に遭い、その時の怪我の影響で勤めていた会社を辞めざるを得なくなってしまいました。その後、地元に帰って働きはじめたときにスカウトを受け、ボーイの仕事に転職。それを機に飲食店の仕事にやりがいを感じるようになり、「いつか独立して自分の店を経営しよう」と決意しました。23歳のときにコンパニオン業を始め、27歳には伊東で1店舗目を開業。伊東青年会議所では第62代理事長も務めさせていただきました。そうした経緯もあり、「いつかは生まれ故郷である熱海にお店を出そう」と考え、現在のラーメン店経営に至っています。

しかし念願が叶い、37歳のときに地元・熱海で店舗を出したときに実感したのは、熱海の街には空のテナントが多いということでした。熱海といえば、全国に名前を轟かせるほどの観光名所でもあります。にも関わらず、現実はかなり厳しい状況にあると痛感させられました。だからこそ、「何とか熱海の街を復活させたい」。そう強く思うようになったんです。

昼も夜も盛り上げて観光客を喜ばせたい

2021年7月に発生した伊豆山土砂災害や、昨今のコロナウィルスにより、観光産業が多くの割合を占める伊豆地区も大きな変革の時を迎えました。当グループも例外ではありません。実際にコロナ禍では、経営する飲食店は軒並み厳しい苦境に立たされました。休業を余儀なくされ、このままいけば商売が立ち行かなくなると危機感を抱いたのは私だけではなかったでしょう。

そうした危機感があったことも、「熱海ゴールデンアイ」を開業する大きな後押しになりました。苦境に立たされている時だからこそ、地元産の魚を使うことで地域の漁業や飲食業界を盛り上げる一助となるかもしれませんし、微力でも地元を盛り上げるきっかけになるかもしれません。だからこそ、実際に金目鯛を使うというだけでなく、飲食店開業に伴う店舗の内装工事では地元の内装業者さんにも協力していただきました。今でも魚屋さんのほか、八百屋さん、酒屋さんなど、取引させていただいている業者さんの9割は地元の方々です。苦しい時こそ仲間と共に乗り越え、良いときは自分だけではなく、仲間と分かち合いたい。そんな思いをこれからも大切にしていきたいと考えています。

世界に飛び出す熱海ブランド

今後の当社の展望としては、金目鯛ラーメンの可能性をもっと引き出していけるよう、FC展開も視野に入れた店舗拡大を考えているところです。実際に2024年の夏には2店舗目をオープンする予定で、より多くの方々に食べにきていただけるよう努力を続けていきたい。現在はインバウンドの来訪者が増えていますし、アジアのみならず、ヨーロッパから来られるお客様も多いです。日本人が好む魚介系の味が海外の方の好みとマッチするのかと不安もありましたが、多くの好評をいただいています。

熱海を拠点に伊豆全体にラーメン屋を展開し、全国に広げ、いずれは海外に進出する流れをつくっていくことが一つの目標でもあります。社名の「ゴールデンアイ」は“金目”鯛から名付けていますが、世界中の人が金目鯛ラーメンを食べて日本の伊豆・熱海を感じていただけたら最高でしょう。

地域の良さを、一人一人が語れる街へ

私にとっては、熱海に訪れた方々に楽しんでもらうこと。それが現在の事業をする上での一番の望みでもあります。観光客の皆さんが「熱海良かったね」と言ってもらえる姿をいつも想像しながら、今日まで仕事を続けてきました。熱海の魅力は多様です。山と海に囲まれ、自然が豊かで、極上の温泉があり、昼も夜も楽しめる多彩な街でもあります。昔ながらのお店もあるし、新しいお店もある。オールジャンルが揃う地域なので、世代を問わず誰もが居心地良く過ごせる環境とも言えるでしょう。最近では都内から移住されたり、別荘を買われてセカンドライフを楽しまれたりする方も増えているようです。初めて観光に来られた方も、これから何度も来たくなるような奥深い魅力がここにはあるんです。

そんな熱海の街を、地域の皆が一緒になって盛り上げられたらいいなと思っています。それが地方でやっていくビジネスの秘訣ではないでしょうか。仲間が盛り上がれば自分も盛り上がる。その逆も然りです。熱海に興味が湧いてきたあなた、ぜひ一度おいでください。美味しい金目鯛ラーメンもあります。私が案内しますよ。

株式会社ゴールデンアイ

代表取締役CEO

1979年生まれ、静岡県熱海市出身。様々な仕事を経験し、キャバクラのボーイにスカウトされ、飲食の道に行くきっかけをつかむ。23歳で独立し、コンパニオン派遣会社を設立。27歳で伊東に初出店し、その後夜のお店含め熱海・伊東中心に15店舗展開。2017年、一般社団法人伊東青年会議所第62代理事長に就任。地元愛が強く、地域活性を目的に2022年4月、伊豆名産の金目鯛を使ったラーメン店「熱海ゴールデンアイ」を開業。