INTERVIEW

経営に活用できる、自己一致を原則とする心理学

株式会社東京ビジネス・ラボラトリー

代表取締役 朝妻秀子

心理学、脳科学をベースにした、個人または法人向けの研修、セッションを提供する株式会社東京ビジネス・ラボラトリー。企業研修やメンタル顧問、経営者サポート顧問など“人間力”をアップさせるサポートを多種多様に用意しているほか、カウンセラー養成スクールの運営も行っている。「心理学を基に現代社会のさまざまなシーンで、人が人らしく、 自己実現していける世の中作りを目指している」という朝妻秀子代表に話を聞いた。

心理学を取り入れた経営を実践

弊社は、心理学をベースにしたコンテンツサービスを提供する会社です。個人の方へのカウンセリングはもちろん、法人向けのメンタルヘルス。その企業で働いている方々の心のサポート、そして心理カウンセラーになりたい方の養成講座といったものが主な事業内容となっています。

東京ビジネス・ラボラトリーという社名は、私自身が心理学を深く学んでいくなかで、これを経営者の方々が知ったら大きな武器になるなと思ったことに由来しています。会社の成長や発展に、心理学という要素を入れることによって会社のためになる。そう思って、周りの経営者の方々に「心理学を導入するといいですよ」と伝えていましたが、あまりピンと来ないと言われる方も多かったんですね。そんななか、だったら自分が心理学を使って会社を経営してみたらいいんじゃないか、と起業を決意し、生まれたのがこの東京ビジネス・ラボラトリー。ビジネスのなかで実験をしよう、という意味でラボラトリーと名付けました。

自己発見からの自己一致を目指して

会社の経営に心理学が必要と言われても、やっぱりまだイメージがわかない方も多いと思います。まず、心理学で一番大切な考え方というのは、自己一致。これは弊社の理念でもありますが、自己一致というのは嘘偽りがなく、裏表なく思っていること表現していくこと。企業というのは、建前と本音。どう大きく見せるか、どうよく見せるかということをやりがちですが、結局それはユーザー目線で見ると「思っていたのと違ったな」ということが起こる原因になってしまう。本音と建前を使い分けない、という考えで経営をしていくことはとても大事なことだと考えています。

また、隠したい場所が出てくると、結果的に自分の力を出し切れないのでは、とも思っています。相手に誠意をもって相手に全力で当たっていくという考え方も心理学では大切なことですが、それも自己一致に当てはまるのではないでしょうか。といっても、自己一致というのは本当に難しいこと。言葉にすると簡単ですが、なかなかできることではありません。自己一致の始まりは自分を知ること。自分のことが分からないと本音で喋っているつもりでも、どこかでごまかしてしまっている可能性があり、自分を知らなければ表現もできない。自己分析という形で自分への理解を深めることが、自己一致につながっていくと思います。私自身、起業したばかりのころはやっぱり自分を大きく見せた方がいいのかもしれないと悩むこともありました。ですが、ありのままの自分でお客さまと対峙することで、少しずつ事業も拡大することができましたし、自己一致という心理学の原理原則というのは、経営をしていくうえの日々の指針になっています。今18期目に入りましたが、起業前に経営にあたって心理学はこういうときに必要になるのでは、と感じていたところと重なるところも多くあります。

心理学が必要となる時代に

弊社を立ち上げたのは2007年。当時は、知人の紹介などで少しずつお仕事を増やしていきましたが、ちょうどリーマン・ショックのタイミングで企業の研修などが減っていた時期でもあり、最初の3年は正直苦労したことも多くありました。最近はストレスチェックだったり、健康経営だったりと人の心にフォーカスが当たるようになり、経営に心理学って必要ですよね、と言っていただくことも増えてきました。人の心を大切にした時代になってきたのかもしれません。

法人向けのカウンセリングを受けていただいた企業ですと、心理学のさまざまなツールを使って目標を達成。具体的な売り上げの数値目標をクリアできたとおっしゃる企業もいらっしゃいましたし、バラバラになりがちだった会議がまとまって、皆さんが結果を出せるようになったと評価いただくこともありました。結果として、イキイキと楽しく働けるようになったと言われる方が非常に多いですね。いらいらして大きな声をあげてしまう方がいらっしゃる職場だと、皆さん穏やかに優しくなったというような声を聞くこともありました。

カウンセラーの育成も創業から

企業の中に入ってのメンタルヘルスと個人へのセッション。そして、カウンセラーの育成というのは創業当時からの3本柱です。もともと起業前からカウンセラー育成スクールの講師を務めていたこともありましたが、カウンセラーの仕事は世の中の役に立つ仕事。優秀な心理カウンセラーを多く作り出し、どの方々が企業でサポートするという流れを作りたいと考えていました。

カウンセラーを育成することは、心理カウンセリングの必要性を広めることの一つの手段になるのではないか、とも思っています。カウンセラーになるための勉強そのものが人の心を成長させる。人生を豊かにするためにとても役立つとも感じています。

心理学を学んだのは子育ての悩みがきっかけ

私が心理学に興味を持ったのは、子育てがきっかけでした。当時は、専業主婦でしたが子どもが自分の思ったように育ってくれない、問題を起こしてしまうと悩みも多くありました。そんなタイミングで心理学をベースにした子どもとの関わり方を学び、これをもっと極めたい。自分のために知りたいと思って勉強を始めました。実際、心理学を学んだことで子育てには大きな変化がありました。自分が子どものために、と思ってやっていたことが実は子どものためではなかったことに気付かされましたし、世間からどう見られるか。私の立場を心配していただけだったなと改めて省みることができました。

子どもを尊重して、自分がいいと思ったことをさせるけど、しっかりと責任も取ってもらう。心理学をベースにした子育てを知ってからは、そういった関係性を子どもたちと作っていきました。なかでも、子どもに対して「それは社会的に通用する考えだろうか」ということを念頭に置いていたのが大きかったように感じています。社会に出たときに自分はどうしたらいいのか。どういう責任の取り方があるのか。それを考えて行動するように、ということを子どもたちには長年伝えてきたように思います。

アメリカで使用されているプログラムを利用

私がアメリカの心理学メソッドを学んだこともありますが、当社ではアメリカの団体とライセンス契約を結んだプログラムをカウンセリングに使用しています。心理学の世界では、日本とアメリカには20~50年の差があると言われています。カウンセリングや心のメンターという考え方があるアメリカでは、多くの人がホームドクターのような形でお気に入りのカウンセラーさんを持っています。ちょっとした悩みでもカウンセリングを受けるのが一般的ですので、カウンセラーの層も厚くなっていくんだろうなとも感じています。また、今はリアルでお会いできなくてもリモートでさまざまな地域と結ぶことができます。アメリカから直輸入した心理学を。日本全国の中小企業や個人の方たちとセッションという形でつないでいくことができるのも大きなメリットかと思います。

カウンセラー養成講座の授業もリモートでつなぐことができますので、地方から。ときには海外からセミナーに参加される方も。地方の企業で研修を初めている後輩や卒業生も増えていますので、どんどん拠点を増やし、日本全国で活躍するカウンセラーさんを輩出していきたいと考えています。心理学は心を理解する、理屈で解き明かす学問。より幸せに、より自己実現できる生き方をするためにはどうすればいいのか。それを研究した学問ですので、誰にとっても役に立つもの。自分の取り扱い説明書でもあるのかなと感じています。より多くの方が自分の取説を手に入れられるよう、心理学の必要性を今後も広めていきたいです。

株式会社東京ビジネス・ラボラトリー

代表取締役

1959年生まれ。東京都出身。大妻女子大短期大学英文科卒業。子育てで悩んだことをきっかけに心理学を学び始め、その後心理カウンセラーとして活躍。心理と企業経営の橋渡しがしたいと起業を決意し、独立。2007年に株式会社東京ビジネス・ラボラトリーを設立。陸上自衛隊 霞ヶ浦駐屯地にて 部外カウンセラーとして勤務するほか、ハワイ州NPC法人ホームメンタルカウンセラー協会理事長、(株)電通東日本メンタルヘルス顧問、日本大学評議員を担う。